2018-01-01から1年間の記事一覧

雑記 夢

ふと、気が付くと、荒涼の街に二人、立っていた。隣に立ちたるは、懇意の友人、S君である。 どうも油断するとまずい様なので、一先ず、と歩き出した。 一人の少女が立っている。目には両の目を隠すように細長い布、手には、一つの鞠。ぽおん、ぽおん、と宙に…

無題

おのれの行く末を思い、ぞっとして、どうにもならない宵は、よく、ふらふらと、愚鈍ゝゝと、路頭を抜けて行くのである。 「先行きならぬ不安」と「後見の悔」は、どうしてか、水と油。如何許りか。 ことに、去年の秋、ふと感じたものがある。ただ、感じたと…

無題

肥大化する自己嫌悪、反比例する自尊心。 無駄だと解っていながら、無駄じゃないとも思い、納得を求める。だから、肥大化して、反比例する。 その奥底には、自分にとって都合の良い人間像がぬくぬくと根を張っていて、ある意味本質的な核。 無駄で、有益。有…

雑記 夢

朝、まどろみを取っ払って、目覚めると、また夢の中にいた。 確かに、ここは、私が先刻まで見ていた、夢の中だ。 この世界では何でも揃う。揃うと言うか、出現する、というのが正しい。懇意でなくなった友人、幼少期の遊場、昔住んでいた家。時々記憶の端を…

雑記

若者の懐古主義と老年の懐古主義は必ずしも一致しない、と思った。 前者は、その根底にある種の憧れが根強く存在し、後者においてはある種純粋な「懐古」が存在する。 そもそも前者はあくまでも懐古主義的側面を有しているのみで、そのものとは言い難いかも…

無題

治り掛けの瘡蓋を剥がして後悔する、何と秀逸な喩えだろう。友人がいつかふと呟いた、その引用。 そんな瞬間は幾度とあるな、と思った。今日もあった。 何とも言えない、無為な時間を只浪費していく毎日である。駄目だなあ、どうしたものか。

雑記

最近、突拍子もない、今一よく解らない夢を毎晩見る。 夢の中で、昨日は怪物に追われたし、一昨日はかなり時代を降った戦場に送られたし、その前の日は北で生きた人間を解体させられた。総じて惨々たる所に突然送られ喚いていた。目覚めた時の気分たるや、と…

K

みちみち一言も、口をきかない。情の揺れが特段激しい彼は、むっと不機嫌になって、黙り込んでしまった。 今、喫茶店で、向かい合って席に着き、得意の論争を繰り広げていた所だった。彼はよく、自分の思う所と反することをぶつけられると、頭に血が上る。よ…

雑記

ミルクよりクリームの方が高価な訳を知っているだろうか? 牛はちっちゃなボトルにまたがるのがいやだからさ。 ヴォネガットはこう言った。 人は、暗い海の中を、ずる、ずる、と、経験と言う行灯を頼りに進んで行く。 倫理、常識、慣習、、。色々を反芻しな…

雑記

人生は由来、あんまり円満多幸なものではない。 愛する人は愛してくれず、欲しいものは手に入らず、概してそういう種類のものであるが、それぐらいの事は序の口で、人間には「魂の孤独」と言う悪魔の国が口をひろげて待っている。 そう述べたのは安吾だが、…

雑記

最近、父方の祖母がよく夢に出てくる。 その祖母は今年3月に急逝したのだが、とても、気丈な人だった。 私は生来物事に真面目に取り組む事が苦手な性分で、かつ最近というもの堕落甚だしい。夢の中に出てくる祖母は特段普段と変わらない感じであるが、「しっ…

雑記

仕事帰りの電車の中で、先が見えない不安と先の行の後悔は同質である、と、ふと思った。 というのも、明確な目標を立てずして今迄やって来たこと、それにより先にも後にも苦悶しているから、である。 とは言いつつも自分に取って最も難しいのは「明確な目標…

回廊

目が覚めると、階段に立っていた。日本橋の二、三倍もあるだろう幅をのぞけば、特段変哲の無い階段である。 上から、下から多くの人が行き来する。歩く人達は果てしなく普通であるが、何処かがおかしい。けれども、何がそう思わせるのかは解らない。 往来す…

雑記

不完全、要らぬもの、短針の無い時計。 コチコチと音を立てながら、健気に動いているが、その存在に実用性を纏った意味は無い。 さはならぬ、と思いつつ、自分がそうであることを心の端で認める。 生きることに意味を見出すか、意味を見出した後生きるのか、…

2018/03/04

葬儀当日。予報の雨を覆しこの上ない晴天。三月初めとは思えぬ暖かさ。父曰く「もう春だね。」祖母は、昨日と同じように、目を瞑って臥して居た。悲しい哉、遺影の笑顔とは真反対、見比べ、涙。肌に触れた。冷たかった。やはり受け入れられず。受け入れられ…

或る人

思い掛けない苦しみが、思い掛けない痛みが、思い掛けない死こそが、理想であると、或る人が述べた。 聞くところに依れば、最後の、死こそ、と言うものはかのユリアス・シイザアの言葉で在るそうだが、これは言い得て妙である。 思い掛けない苦痛は、却って…

先は見えない

目が覚めた。 私は、自宅の羽毛布団の中で、すや、と眠っていたはずだが、虹彩に映る景色は記憶に無い。不思議と恐怖や焦りは無く、頭の中に、ぼうっと朧掛った靄を取り払うのに、長い時間は必要としなかった。どうやら、私は建物の中に居るらしい。壁一面が…

前髪

すっかり陽が落ちた道路で車を走らせる。 眼の前をちらちらと、伸びた前髪が揺れる。邪魔だが、此れでいい。 其の時分の私にとって、伸ばした髪は内面の象徴の様な物で、漠然としながらも価値の在る物であった。 サービスエリアで買った温かいコーヒーはもう…

覚書

感情は、不思議である。人間の持ち合せる物の中で一番、矛盾を孕むものであろう。少なくとも私はそう考えている。 喜怒哀楽という言葉が有るが、人は、人間と言う物は、此れに対して従順で在り、従順で無い。嬉の感情を持つ時などは特にそうだ。素直に喜ぶ時…

ずれたままで行った、帰り道は知らない。

ぷらぷらと歩いていた、夜半。 左ポケットの中で揺れるウォークマンからは、今日も同じ音楽が流れている。 自由が丘。駅から少し歩いた商店の並びにて。 誰が、何をーーー 陽が出ている間は人間が居る、そういう類の場所に限って夜は静かだ。 暗がりの中、半…