覚書

感情は、不思議である。人間の持ち合せる物の中で一番、矛盾を孕むものであろう。少なくとも私はそう考えている。

 

喜怒哀楽という言葉が有るが、人は、人間と言う物は、此れに対して従順で在り、従順で無い。嬉の感情を持つ時などは特にそうだ。素直に喜ぶ時もあれば、そうで無い時も有る。他の三つでも多かれ少なかれ同であろう。勿論、一個人の為人に依る所も大きいのだが、感情の波に、流される侭の時もあれば、疑心暗鬼に陥いることもある。無理な物は無理、唯其れ丈の事なのかも知れない。知らぬ、解せぬ。

 

兎に角、都合が良い奴で、幾許も質の悪い奴なのだ。

何が、何時、何故に、其の様に、成ったか、解らない、そんな物なのである。

 

其れ故、人は、逃げる。

身体に空いた、ほう、と空いた、でかい穴に、鋭く、鉄の様な風が、通り過ぎて行く。此れに耐える事が出来ず、逃げるのだ。逃げた先には何も無い。しかし、人は、逃げる。逃げて、逃げる。

 

老いたとて、其れは変わらない、と思う。暫前の英国の詩人であったか、老いても憤怒の炎を燃やし続けろ、と書いた者が居る。私の憶えて居る処では、怒れ、怒れ、と言う文言の詩であった。

其の炎は、何に対する憤怒か、生への渇望か、老いへの嫌悪か、私には、解らない。

 

逃げろ、逃げろ、逃げて、逃げろ。

 

感情は、不思議である。

 

 

               

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                ー覚書ー