雑詞
川辺に咲くのは一輪の花
少女が一人寝転がっている
何も気にせず自転車が通り過ぎる
「あれ」は来るべき時を待っている
あれからどれほどの時が経ったのか
男はうずくまって考えている
よく考えれば些細なことだが
彼にとっては脳内を支配する出来事だった
机の上には錆びた万年筆
でもインクはまだ乾ききっていない
使われることのないそれは
ただじっと待っている
人々は声を上げるけれども
何も伝わりはしない
怒れ、怒れと唄った文学者は
とうの昔に忘れ去られた
地平線の向こうには
かつてあった国
ぽつねんと浮かぶ島は
もう誰も知らない
本棚に並ぶ文字たちは
何年も光を浴びていない
この歴史を築いた者達も
きっといつかはそうなるのだ
リモコンのボタンを押しても
テレビは何も言わない
いつもと変わらない日常の中で
「あれ」は来るべき時を待っている